とある土木女子の日記

ブラック企業や日常のアレコレをつづる日記です。好きなものは旅と猫。

十二国記

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今更ながら2017年一番良かった《映画・ドラマ・アニメ》

せっかくなので1/3までの限定お題から書いてみた。

去年は映画なら「ナラタージュ」「スターウォーズ・最後のジェダイ」等話題作はざっとは見てた。アニメなら再度「君の名は。」と「サマーウォーズ」とか旬の話題作も偶然ながら見てた。

私的に2017年最大ヒットを挙げるのであれば、「十二国記」になる

タイミング的に自分は失恋したとか裏切られてどん底だと思ってた頃にみて価値観に影響を受けた作品だった。すごく癒される名作、大人でも楽しめる哲学的なアニメな印象。

※完全なる趣味なのですごく長文になりました。歴史アニメ好きはいいと思うけど。

 

十二国記を見たきっかけ&概略

当時、お盆休みでNHKの「十二国記」というアニメが面白いという記事を誰かのブログで目にした。ざっとググる好みの絵柄だし、でかいネズミも出るというのでわくわくしながら視聴することに。

ネズミは姿はもふもふ・歩き方もホタホタで動物好きにはたまらない

ピーターラビットみたいな感じのネズミなんだけど、苦労人で人格者なネズミなのだ。作中でキーになる役どころになります。

※正確に言うと「半獣」というネズミにも人にもなれるという種族という設定。大きさは目算120cm前後かな。現実にはそんなネズミいないけど、アニメですから。普通に話しかけてくるしね。

 

あらすじ:日本から拉致された女子高生が紆余曲折を経て、中国みたいな国(パラレルワールド?)にて王様になる話。

 

原作は小野不由美さんの小説で、アニメ版とは拉致されるときに同級生が一緒に来るか完全なるソロできてしまうかなど多少差がみられるけど、どちらもよいです。

OPの曲は、梁邦彦の十二幻夢曲で中国独特のキュイイーンって琴みたいな音色で良い感じ。EDの曲はアニメアニメしてるので若干私の趣味ではありません。

 

この作品のいい所

ストーリー的には、国を治めるにはとかいうテーマも後々絡んでくるので大河ドラマとか歴史好きな人は抵抗なく楽しいと思う。

時代劇と違って、勧善懲悪ものではないので、人間って汚い所もあるけどいい面もあるよねという描き方。立場によって善悪があるという見方で、結構現実的なアニメなんですわ。ネズミよくしゃべるけど。

NHKは受信料の鬼取り立てで評判悪いけど、たまーにいい作品が来る。

 

十二国記」というように、このファンタジーの世界には国が12個あって、特定の国に焦点をあてて展開される。主人公も都度変わって、何編かのシリーズに分かれてるのだけど人生における名言が多い。

最初のシーズンは陽子で後半から面白くなるのだけど、「お前もっと頑張れよ」と思える主人公のシーズンもある。

 

ファンタジーアニメなのに、人種差別的な問題だとか、裏切りや利用されてしまうとか現実的な問題が多い。人としてどう生きるのか、といったこともテーマになってるみたい。

とりわけ「月の影・影の海」が名言が多い。あとのシリーズもいいんだけどパンチがあるのは最初の陽子が主人公のシリーズかな。

ワンピースも、もふもふした仲間(チョッパーとかいう可愛い鹿ちゃん)を連れて冒険するんだけど、リアリティがないので今はそんなに好きではない。

 

原作の編集者はこんな感じですすめてる。

担当編集者が語る「十二国記」の魅力 | 新潮文庫メール アーカイブス | 新潮社

 

生きていく道程や幸せの在り方について、自身の現実に重ね合わせ考えることができます。また、歴史小説が好きな男性にもお薦めです。政治的な仕組みや役割は、会社や家族を支えるお父さん世代にも、ずっしり響きます。 

 

主人公の陽子ちゃんはある日突然、平和な学生生活から完全なるよそ者として異世界で迫害される生活に。

ちなみに序盤の主人公の陽子は、ナヨナヨしてて卑怯でずるい。

事なかれ主義でよくいそうな女子高生だった。いわゆる良い子ちゃんで他人の目を気にして生きている。

真面目だけど、誰にでもいい顔をしようとする。いじめられっ子は助けないけど、一人きりの時だけ声を掛けたり。すげー嫌な奴、偽善者って言うの?

作中でも「薄汚い偽善者」と一緒に来た杉本から罵られるのだ。

 

これが、誰も知り合いも守ってくれる人も居ない異世界に来たとたん、陽子(+同級生2人)はよその世界からきた「海客」(遠くからきた異邦人みたいな意味)として迫害される。

今までつつがなくいい子でいられたのに、一転して「災いをもたらすもの・処刑されるべき存在」として他人に頼れないサバイバル生活を余儀なくされる

盗み・強盗(未遂だけど)どころか、殺しも(モンスターみたいなのが出てくるんで)手を染めます。ざくざく斬って血が噴き出す、そんなにグロいシーンはない。

 

また、助けてくれる人も出てくるのだが、実際は海客という弱みを利用するために親切にしてくるだけで裏切られ続ける事がほとんど。

最初のうちは主人公は泣いてばかりだし、中二病の同級生はうざいし、たいていの人は見てて「いつ面白くなんの?ピーターラビットネズミはいつ出てくんのさ?」となるはずだ。

※最後の最後(物語としては中盤すぎてやっとこさ)助けてくれる存在の楽俊(もふもふでいいネズミ)が現れる。

そこで、陽子は人としてのあり方だとか自分の気持ちを見つめ返すことになる。これが30半ばの私にもぐっとくることが多い作品なのだ。たかがアニメ、されどアニメ。

 

裏切られる感が半端ない

主人公の陽子もだけど、一緒につれてこられた杉本という女子も裏切られまくる。

以下、ネタバレになってしまうけど、こんな感じで裏切られる。もう一人杉本の彼氏で男子の浅野君というのもいるけど、こいつは利用価値がないのでただのモブ。実際最近の男子はナヨいやつが多いから、世相を反映したよく出来てるアニメだなと感心する。

 

1回目:人の良さそうなおばさん(タッキ)

異世界に迷い込んで困った3人だが、とある村にある空家に強盗に入る。

入った家で居合わせたおばさんなのだが、泣き出す主人公(杉本がおばさん殺そうとしたので怖くなった)を見て「それだけ困ってたんだろう?大変だったね」と助けてくれるのだ。ちなみにこの婆が最初に陽子一行を助けてくれる民間人。

見てる私も最初騙された。いいおばさんにしか見えなかったもの。

 

身寄りのない若い女の子2人(+モブ浅野)に、洋服や泊まるところ、温かい食事をさしだすいいお母さん風な登場をする。その上、こんな事を言ってくる。

「私は子供が死んで亭主と別れて一人暮らし。海客だからといって酷いよね。同じ人間なのに。丁度働き口なら聞いてあげるから一緒に行こう」と誘う。

ところが、連れてこられた先は売春宿!!酷い。。。

※ちなみにタツキは陽子たちに「都会に住んでいる母が店を出していて人手が欲しい」とかなんとか言って騙して連れてきた。実際は遊郭みたいな店で遊女みたいな人がいるのでガチな人身売買ですね。

ちなみに聞いてないと思って売春宿の女主人とタッキが話しているところに陽子が居合わせるのだが、「騙される方が馬鹿なのさ。身寄りもないんだし身内が怒鳴り込む危険もない。いい器量でこの値段ならお買い得だよ。」と言いたい放題。

利用されそうになったもの:若い女の身体(陽子+杉本)※モブは置き去り。

 

2回目:同じ海客の爺さん(松山せいぞう)

第二次世界大戦終戦前のタイミングでこの世界に流されてきた老人。言葉も分からず何十年と孤独で貧乏な暮らしをしていたようだ。

※「蝕」という嵐に巻き込まれて、ファンタジー界とこっちの世界(日本・中国)で人の移動が起きるという設定。

 

裏切りシーズン1の売春宿に陽子たちが連れていかれるが、モブ(浅野)は男なので用事がないのでタッキに置き去りにされる。

そこで浅野は暇なので杉本の制服に顔をすりつけたり、もやもやを叫んだりしてるところを、通りかかった爺さん(たぶん掃除の仕事かなんかしてたのかも)が何十年ぶりかに日本語を聞きつけて駆け寄ってくる。

いきなりモブに近づき、「もっとしゃべってくれ!!」と勝手に親近感を持ってくる。

※この世界は、日本語ではない。中国風だけど中国語でもない言語という設定。

 

最初は同じ日本人だぁ!と喜んで親切にしてきた(モブに陽子たちが、タッキに売られることを教え、売春宿から逃げ切るときに船を出してくれた)。こいつも見た目は汚いジジイだけど、いいやつだと私も最初思った。

ところが話が進むにつれ、陽子たち3人が戦後の豊かな時代の生まれであったこと・陽子はこっちの世界の言葉が分かる事で「何でわしだけがこんな目に!!」「貴様だけ美味しい目見やがって!!」という事で憎しみMAXに。

怒りのちゃぶ台返しをしつつ「言葉も分からないこんな世界に!わしが何したゆうんじゃ。。(広島にいた方言のよう)」と号泣。

 

その後、「お嬢ちゃんのせいじゃないもんな、すまんね。ゆっくりしておいき。」と誤ってくる。が、実は油断させておいて、夜中のうちに隣に住んでいるゴロツキと一緒になって役所にたれこみに爺はこっそり早朝から出かけてしまう。

翌朝起きると、モブが縛られそうになってた。※モブ浅野は異世界に来ても、陽子に働かせようとしたり「お腹が空いた!」とか騒ぐだけ役立たず。

ジジイと3人で賞金を山分けな予定だったが、陽子らはギリギリ逃げ切る。

※役所に海客を連れて行くと報奨金がもらえるらしい。ちなみに海客はほぼ処刑される。

利用されそうになったもの:海客の命と引き換えの報奨金(犯罪者の引き渡し)

 

3回目:隣の国の王様とその宰相(美女)

主人公と杉本・モブ(浅野)は離れ離れになるのだが、杉本のほうが陽子を殺害するために利用される。

※杉本はいじめられっこで現実世界にはハブにされていてファンタジーの世界こそが「私の居場所!!」「私は意味があってこの世界に連れてこられた!!」と信じていた。

この王様は正規の王になる陽子を排除したい。知り合いである杉本に殺させてしまうのが早いので、「お前はこの世界を救うための選ばれし者」と言い、この世界を脅かしてしまう存在だから陽子を殺せと迫る。

けっこうノリノリで陽子を殺しに来る。こわーい。

しかも、「陽子を殺したらこの世界での生活を保障する」とそそのかしといて、ミッションをほぼコンプリートするも、さびれた田んぼしかない土地に幽閉されたり。

利用されそうになったもの:殺害するのに適した立場(友達?なら油断するから)

 

もう一人の自分との対峙

 物語が進むにつれて、陽子は青い猿の幻影に付きまとわれる。

 「裏切られる前に殺してしまえ」「利口になれ」「他人を信じるな」という言葉を、裏切りババア・裏切りマンが出るたびに陽子に語りかけてくる。

※青い猿=自分自身の疑いの心、というのは最後の方で分かる。

 

二度の裏切りや、杉本にも殺されかけたあとで、「お前は日本でも不要な人間だ・裏切らなくては生きていけない・騙されて利用されて死ぬんだ」とひたすらネガティブワードを浴びせ続けられる陽子。

 

裏切りを克服するまで(自分との対話)

物語的に陽子は刺客を次々送り込まれて逃げ続ける運命なのだが、ついに杉本に倒され、右手を剣で貫通される。ひぃぃぃぃ!!( *д*):

「もう野犬の餌になるから捨てておきましょう」と悪のご一行に置き去りにされ、やつらが立ち去ってから起き上がり、川に落ちてったモブ浅野を探してみたり町へ降りようと歩くのだが。。

 

怪我+大雨に打たれて、疲労で行き倒れになる。ここで登場するのが、ピーターラビットことでかいネズミ(楽俊)。でかい葉っぱをかさ代わりに巨大サイズのネズミが出てくる時点でもふもふマニアは狂喜する事だろう。私もその一人だ。

倒れてた陽子を助けて、家で看病する。

 

ネズミ(楽俊)は置き去りになった陽子を助けたのだ。でも話す言葉は裏切りシーズン1のタッキと同じようだし、何よりもう他人を信用できない。

見てる方は、「陽子ちゃん、これはいいネズミ。今回は大丈夫よ。」と思うのだけど、彼女はこっちの世界に来て親切にされては裏切られ続けて、友達にも裏切られで、そんな心境ではない。半殺しにされたら無理だわね(´;ω;`)

ここは裏切られ続けた陽子さん、「体力を取り戻すまでこのネズミを利用してやろう」「ネズミを人質に日本へ帰るんだ」と下心むんむんで、楽俊と行動を共にする。

 

傷が癒えた後、海客を迫害しない国・半獣にも差別のない国として有名な大国である「延」に向かう事に。そこにいけば日本に帰る方法も分かるだろうと。

ネズミも半獣である自分も就職できる国に行きたいという事で利害が一致。自分の国では職に就けないようだ。

が、その道中(城門の手前)で敵に襲われネズミと離れ離れに。敵は倒したが、ネズミが逃げる人の下敷きになって潰れてしまう。

 

適であるでかい鳥(2m越えでキモイ鳥)を倒すと、緊急事態で閉じられてた城門が開くが、役人が出てきたため陽子は立ち去る。

そこでまた、青い猿登場。自分の身を保全するために「ネズミを信じるな・殺せ」「あんなネズミを信じるのか」「一匹しかいないうちに殺せ」と言い続ける。

「ネズミに止めを!!」「あいつは裏切ってお前を役人に売るかもしれない!!」「今まで散々騙されてきたんだ!!ネズミにを殺せ!!」

恩人であるネズミを殺してしまうのか?というところで、陽子は気づくのだ。

 

自分が相手を信じる事、相手が自分を裏切るのは関係がない。

この場面がこのシリーズの要だと思う。

青猿(陽子のネガティブな本心)は、あくまで他人を信じても裏切られる・この世は絶望だとして死ね死ね責めてくる。

青猿のいうように、他人を信じて裏切られ・利用されることもあるけど、全てを疑っていては本当に信用できる人間までも信じられなくなってしまう。

これは、サバイバルなこの世界だけではなくて日常にもよくあることだ。

こうした心境になった陽子は、命の恩人であるネズミを殺せ・止めを刺して自分の身を第一に考えよという青猿の言葉(陽子のネガティブな意思)に最終的には打ち勝つ。

ネズミを見捨てただけでも苦しかったという、その感情が答えだったのだ。

 

自分に置き換えても、信用してきた会社にいいように利用されたとかあったけど今まで勤めてきた会社が全て酷い会社だったわけでもない。

長く付き合ってた友達や彼氏が音信不通にしていきなり去るようなのが続いたからと言って、次もそういう友達もどき・だめんずにあたるというわけでもない。

私が組織や人を信じる事と、相手が私を裏切るかは関連がないのだ

自分が信じたいなら信じる、あとは相手の問題。(アドラー心理学にも通じるところがある)

 

私は一人だ。人は自分の為にしか生きようがない。

「生きるためだ。ただ死にたくないだけだ。」というスタンスで敵をばっさばっさと斬り続ける陽子。他人は裏切るから、最初から誰も信じないで利用しろというのが青い猿の主張。

陽子が不安になるごとに、「お前は化け物だ。この世界に入らない人間なんだ。」と自殺をほのめかす。

しばらくはこの青い猿に支配されるのだが、「誰も信じてくれなくても、私だけは私を労わってやる。生き抜くんだ」とあくまで自殺はしない。

楽俊を信じようと決めてからは、別の意味でこの言葉をとらえる。 

 

番外編:中二病の杉本さん

 

陽子のクラスメートの杉本さん。現実世界では暗くていじめられてて(でもチャラい彼氏はいた)納得のいかない状況。

そんなときに異世界に拉致されてきて、むしろ喜んでいた変態さん。

「私がこの世界にふさわしい」

「私の物語に巻き込んでしまってごめんなさいね」

「私がこの世界を救った」

「私が王にふさわしい」

「ここが私の本当の世界」

などなど中二病発言が満載です。クラスメートの陽子を切りつけて、手を貫通させてもドヤ顔で得意顔。

彼女も最後の最後には改心するのですが、現実では向き合ってこなかったという「いい子にしてれば無難だから」という陽子とは別な意味でのコミュ障だったのです。

※分かりやすいコミュ障といえばむしろこっちかな。

 

ちなみに高校生の頃の私は、陽子よりこっちの杉本寄りだったので、彼氏がいる設定の時点で「んま!!生意気な!!」と思ったものです。

あそこまで激しく孤立はしてなかったけど、本を一人で読むとか周りを馬鹿にするとか自分は特別な存在とか思っちゃったりするのがそっくり。それでも友達の手を突き刺したりとかは無理っす。

 

 

 

ラスト:成長した陽子&中二病の杉本は日本へ帰る

最後には自分が王につくかor日本へ帰って通常の生活を送る、という選択を迫られる陽子ちゃん。

「自分は貧しい人間だった。だから貧しい人間関係しか築いてこれなかった。だから今度はちゃんとしたい。」として当初通り、日本に帰って元の生活に戻ってやり直そうとしていた。

 

「どちらを選んでも後悔するのなら、やらなければならないほうを選ぶ」との結論から、日本には戻らずにこの世界で王になる事を選んだ陽子。

これは物語の話だけど、実際にも通用する事かなと。

最初の頃に人の顔色をうかがっていい子ぶっては、泣いてばかり、恨んでばかりだった陽子が成長したなぁと思った。

 

騙され続けたらああいうふうにはなってしまうけど、乗り越えると変わるものだね。

誰でも彼でも信用してはいけないけど、卑怯者にはならないという生き方が素敵です。

アニメなので理想論かなと思う所も多々あれど、現実に通じるところも多い話かなと思うので推しできる名作です。